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ランキング論評

『サスペリア』が36位。私は見せるほうに肩を持ちたい
——10i.jpのホラー44作ランキングに、うるさい客として物申す

 2026年8月  姉妹サイトの順位表への論評  ホラー偏愛の常連客  約11分

姉妹サイトがホラー映画の順位表を出した。1922年の『吸血鬼ノスフェラトゥ』から2018年の『ヘレディタリー/継承』まで、44作に六本の物差しを当てて点をつけている。全部読んだ。16位以下も開いて読んだ。

そして36位のところで、画面を閉じられなくなった。『サスペリア』である。

先に言っておくと、これは難癖だ。内訳は開示されている。下がった理由もちゃんと書いてある。書いてあるどころか、記事は末尾で自分から白状してさえいる。それでも私は納得できなかった。納得できない理由の大半が私の側にあることも、分かっている。分かったうえで書く。

暗い室内の壁を正面から見たイラスト。左上から差し込む一条の光が壁の粗い質感を照らし出し、右半分は同じ一続きの壁が深い影に沈んでいる

※ 本記事は姉妹サイトの順位表への論評です。実際の鑑賞体験を事実として述べたものではありません。『リング』『呪怨』の仕掛けの構造に触れます。引用する順位・点数・軸の名称はすべて引用元の公開データによるもので、同記事自身が「各軸0〜10点は筆者の評価であり、事実ではありません」と明記しています。本記事に広告・アフィリエイトリンクは含まれません。引用元の 10i.jp は当サイトと同じ編集体制が運営するランキング専門サイトであり、身内の記事を扱うため、この関係を先に開示しています。当サイトは独自の順位を出しません。

この順位表、自分の弱点を先に言うタイプだ

物差しは六本ある。見せない設計19%、音の設計16%、恐怖の因果17%、記録との距離13%、仕上げの精度15%、恐怖の発明20%。この重みで各軸の点を合成して総合点を出す仕組みだ。総合1位は『サイコ』の8.90、2位『エクソシスト』が8.70。0.20差だという。

ここまでは、よくあるランキングと同じに見える。違うのは末尾のほうだ。

「各軸0〜10点は筆者の評価であり、事実ではありません」とある。続けて「出典欄には事実の参照先だけを載せており、スコアの出典はありません(それが存在しないからです)」。母集団についても「別の44作を選べば順位は変わります」と認めている。

点数の出どころが無いことを、点数を出した本人が先に言う。こういうランキング、あまり見かけないと思いませんか。私はこの数行でかなり甘くなった。だから以下は、甘くなったうえでの文句だと思って読んでほしい。

「見せない設計」に19%。そこが私は譲れない

『サスペリア』の内訳を開く。音の設計10。満点だ。

音の設計だけを見る視点に切り替えると、この一本は36位から11位まで上がる。差は25。同記事によれば、スコアは撮影の前に作られて、現場で流されたのだという。音楽が画面に付けられたのではなく、画面のほうが音楽に合わせて作られている。

それでも総合は36位に沈む。見せない設計のレンズでは39位、恐怖の因果では41位だからだ。

ここで記事は、自分から言う。「見せない設計」に19%を割り当てているため、「見せることを設計の中心に置いた作品」は下がる、と。名指しまでしてある——サスペリア、遊星からの物体X、ザ・フライ、死霊のはらわた。そのうえでこう続く。「これは『見せる設計が劣る』という主張ではなく、本稿がその軸を置いたというだけのことです」

正直だ。正直なのだが、その正直さで私の気は済まない。

ホラーの評価は、昔から「見せないほうが上等」に傾いている。想像に任せた。余白を残した。直接は映さなかった。そういう褒め方はいくらでも見つかるのに、真っ赤な照明で全部を見せきった作品を同じ熱量で褒める言葉は、そんなに多くない。19%という数字は、その傾きに具体的な体重を与えたものだ。

『死霊のはらわた』を見てほしい。見せない設計は44位。44作の最下位である。総合も43位。隠す方向にまったく向かっていない作品だ、と記事は書いている。異論はない。異論はないのだが、隠さないことをここまで徹底した一本が下から二番目に置かれる表を、私は素直に受け取れない。

ホラーは、見せないから怖いのではない。見せるか見せないかを決めた人間の覚悟が画面に出るから怖い。私はそう思っている。そう思いませんか。

ただ、見せる側にも上まで来ている作品がいる

ここで自分の主張を、自分で削っておく。

『遊星からの物体X』は総合10位だ。見せない設計のレンズでは28位まで下がるのに、恐怖の因果では3位、仕上げの精度は10点。見せる設計の代表格が、二桁の頭に立っている。

しかもここには後日談がある。1982年の公開時、製作費1500万ドルに対して興行収入は1,960万ドル、同年の公開作品中42位だった。批評は「即席のがらくた」といった調子だったという。その43年後の2025年、米国議会図書館が保存対象に選んでいる。

つまり、見せる作品が沈むのは物差しのせいだけではない。因果と仕上げで押し切れば、この表でも上に来られる。私の不満は、半分が物差しへの不満で、あとの半分は——たぶん、贔屓だ。

無声映画に「音の設計」の点をつける、というのは

もう一つ、引っかかった箇所がある。

『吸血鬼ノスフェラトゥ』の音の設計は5点。音の設計レンズでは41位まで下がる。『オペラの怪人』も音の設計5点で、同レンズ43位。総合はそれぞれ27位と40位だ。

理由は単純で、どちらも無声映画だから。記事もそう書いている。「無声作品2作(吸血鬼ノスフェラトゥ・オペラの怪人)は構造的に下がります」

『ノスフェラトゥ』の恐怖の発明は10点、つまり満点である。日光を浴びると吸血鬼が死ぬという規則は原作小説になく、この映画が作ったものだとされている、と記事にはある。以後100年、その規則は使われ続けた。100年使われる型を作った作品が、まだ映画に音がついていなかったという理由で16%ぶんを引かれている。

面白いのは、同じ5点でも中身が違うところだ。『魔人ドラキュラ』の音の設計も5点。ただしこちらは有声作品で、5点の理由は「スタジオが新規のスコアを作る費用を避けたため、この映画には専用の音楽がありません」。既存のクラシック曲を流用し、本編の大部分が音楽なしで進む。記事はそれを「無音がここでは設計ではなく節約の結果として現れました」と書いている。

技術がまだ無かったことと、金を惜しんだこと。同じ5点が、まるで別のことを指している。ここは軸の粗さというより、点数という形式そのものの限界だと思う。

『リング』が8位で、『呪怨』が38位

日本のホラー二本の話をさせてほしい。

『リング』は総合8位。見せない設計6位、音の設計7位。呪いの本体を映像の中の映像として置いたことが設計の核だと記事は説明していて、そのビデオの映像は35mmフィルムを加工して粒子を粗くして作られたという。観客が画面を見る行為そのものが仕掛けに組み込まれている、と。

『呪怨』は38位。見せない設計は32位、恐怖の因果は43位。記事の説明はこうだ——因果よりも、場所に取り憑いた事象が誰にでも等しく及ぶという規則で動く設計である。

30の差がついた。

採点そのものに文句はない。「恐怖の因果」を17%で置いた表なら、因果を捨てた作品が下がるのは当たり前だ。ただ、私が『呪怨』の設計を好きな理由は、まさにそこにある。誰が悪いわけでもなく、何をしたわけでもなく、その家に入った人から順に等しく巻き込まれていく。因果が無いことのほうが怖い、という立場が世の中にはある。私はそちら側の客だ。

「呪い」を点数にしない。ここだけは全面的に同意する

文句ばかり並べてきたので、ここからは私が全面的に賛成した箇所の話をする。

この記事は、撮影中の事故や出演者の不幸を評価軸に入れていない。理由もはっきり書いてある。「作品の設計ではなく、そこでは実際に人が亡くなっているためである」

そのうえで、記事は「呪い」の語りそのものを調べている。呪われた撮影として語られる3作の総合順位は、2位・42位・44位でばらばらだった。一方、記録に残る負傷は呪いと呼ばれない作品にもある——『フランケンシュタインの花嫁』では1935年1月2日にボリス・カーロフが股関節を骨折し、『鳥』では主演が事前の説明なく生きた鳥に置き換えられて顔に切り傷を負った。どちらも呪いとは呼ばれていない。記事の結論はこうだ。「差は事故の有無ではなく、宣伝がそう呼んだかどうかです」

総合の最下位、44位は『オーメン』だった。呪われた撮影の代表として語られてきた一本である。ところが記事によれば、英語版ウィキペディアには、撮影中の事故についても呪いについても、記述が1行もない。確認できる事故は、特殊効果の担当者が1976年8月13日にオランダで自動車事故に遭ったこと。ただしそれは本作ではなく、別の映画の制作中の出来事だという。

音楽のジェリー・ゴールドスミスは、本作でアカデミー作曲賞を受賞している。同氏の唯一の受賞だ。呪いの話を全部外すと、残ったのは作曲賞と、44位という数字だった。

寂しい結果だと思う。でも、こちらが正しい。人が亡くなった出来事を怖さの点に足すのは、ホラーを好きな人間がいちばんやってはいけないことだ。ここは私も譲れない。

それで、私はどれを棚から出すか

音の設計に16%を割いた表を読んだあとだと、どうしても再生環境の話がしたくなる。

ホラーは、音を絞ると別の映画になる。夜中に家で観るとき、家族を起こさないように音量を下げる。あの瞬間に、作り手が置いた無音が消える。無音は、まわりが静かでなければ無音として届かない。『サスペリア』のように音楽が先にあって画面が後から合わせられた作品なら、なおさらだ。

だから旧作ホラーを家で観るなら、音の環境だけは妥協しないでほしい。逆に言えば、そこさえ整えば家でも十分に戦える。

配信で探すつもりなら、ひとつだけ。本記事は具体的なサービス名を出していない。旧作ホラーの棚は動きが速く、名前を挙げた時点でその一行が最初に嘘になるからだ。観る日が決まってから、そのサービスの公式ページを一度だけ見れば足りる。

最後に、私の偏りをもう一度白状しておく。私はこの順位表に文句をつけたが、文句をつけられたのは、順位表が内訳を全部見せてくれたからだ。点数だけを並べて理由を書かないランキングには、文句のつけようがない。36位に腹を立てられること自体が、この表の親切のおかげである。

それはそれとして、『サスペリア』はもう少し上でいいと思う。

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参考 —— 読んだ順位表: 10i.jp「ホラー映画ランキング」(当サイトの姉妹サイト。本記事に出てくる順位・点数・軸の名称・引用文はすべて同記事の公開データによります。同記事は各軸の点数を「筆者の評価であり、事実ではありません」と明記しており、本記事もその前提で引用しています。2026年8月16日参照)

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